「依頼する会社は決まったのですが、社内で何を用意すればいいのかが分かりません」
導入を決めた企業から最初に届く質問は、ほとんどがこれです。調査会社の選び方を扱った情報は増えましたが、発注してから報告書を受け取るまでに自社側で何をするのかは、あまり書かれていません。実際に手が止まるのは、契約したあとです。
この記事では、依頼から報告までを5つのステップに分けて、各段階で用意する書類と社内の決めごとを整理します。同意書に入れる項目、どの選考段階で誰が説明するか、同意を断られたときの対応まで扱います。依頼先がまだ決まっていない場合は、バックグラウンドチェック調査会社の選び方を先にご覧ください。
この記事の要点
- 依頼は社内で決める → 依頼先を決める → 同意を得る → 書類を渡す → 報告書を扱うの5ステップ
- 最初にやるのは調査会社への連絡ではなく、調査範囲と判断基準を自社で決めること
- 同意書には、目的・主体・項目・取得方法・共有先・保管期間・撤回の可否を書く
- 同意の説明は人事に一本化し、現場の面接官には担わせない
- 受付が止まる原因は書類の不備より、現職への照会可否が未記入であることが多い
- 断られたときは、調査範囲を狭める条件変更で合意できる場合がある
目次
バックグラウンドチェックを依頼する5つのステップ
バックグラウンドチェックの依頼は、社内で決める・依頼先を決める・同意を得る・書類を渡す・報告書を扱うの5ステップで進みます。所要日数は調査そのものが2〜5営業日、社内の準備を含めると初回は2〜4週間を見ておくと余裕があります。
社内で調査範囲と判断基準を決める
どの職種・役職を対象にするか、何を確認するか、結果をどう選考に反映するかを先に決めます。ここが空白のまま見積もりを取ると、各社の提案を比べる基準がないまま話が進みます。
依頼先を決めて契約する
調査範囲・情報源・納期・費用の透明性・体制と情報管理を確認して発注先を決めます。契約時には、現職への照会を認めるかと、報告書を社内の誰まで共有するかも合わせて確定させます。
候補者に説明し、書面で同意を得る
調査の目的・項目・取得方法・共有範囲を説明し、同意書に署名または電子的な同意をもらいます。説明する人と渡す場面をあらかじめ決めておかないと、担当者ごとに説明が変わります。
書類を渡して調査を依頼する
同意書の写しと応募書類を調査会社に提出し、調査を開始してもらいます。多くのサービスがPDFのアップロードに対応しています。記載に不足があると受付が進みません。
報告書を受け取り、選考に反映する
報告書を受領し、事前に決めた基準に照らして判断します。内容の解釈と選考への反映は依頼した側の役割です。受領後の保管と削除も、この段階で運用に乗せます。
この5つのうち、社外とのやり取りが発生するのはステップ2・4・5だけです。残る2つは自社の中で完結します。初回の導入で時間がかかるのは、社外ではなく社内側です。
ステップ1・2|社内で決めることと、発注時に伝えること
依頼前に社内で決めておくのは、対象範囲・調査項目・判断基準の3つです。この3つは調査会社に相談して決めるものではなく、相談する前に自社で言葉にしておくものです。
| 決めること | 決め方 | どこに書き残すか |
|---|---|---|
| 対象範囲 | 職種と役職で線を引く。全員を対象にするかどうかを最初に決める | 採用フローの手順書 |
| 調査項目 | 選考の判断に実際に使う項目だけを残す。使わない項目は外す | 調査依頼書と同意書 |
| 判断基準 | どの結果が出たら、誰が、どう扱うかを事前に文章にする | 社内の運用ルール |
対象範囲は、職種と役職で線を引く
全候補者を対象にすると、費用も候補者の負担も一気に増えます。実務で扱いやすいのは、金銭や個人情報を扱う職種と、一定以上の役職という2つの軸で線を引く方法です。
線を引くときは、例外を作らない形にしてください。同じ職種で人によって実施したりしなかったりすると、選考の公平性を説明できなくなります。基準は運用ルールとして文章に残し、途中で変えないことが前提になります。
調査項目は、判断に使うものだけを残す
項目を広く取れば安心という発想は、費用と管理責任を増やすだけで終わります。受け取った情報は、使わなくても自社の管理対象になるためです。
整理の仕方は単純で、「この項目でこういう結果が出たら、選考の判断を変えるか」を1項目ずつ自問します。変えないと答えたものは外して構いません。項目ごとの内容と、基本プランに含まれるかどうかの線引きはバックグラウンドチェックでは何を調べる?で整理しています。
判断基準は、報告書を見る前に文章にする
判断基準を先に決めておく理由は、報告書を読んでから基準を作ると、目の前の候補者に引きずられるからです。申告と実態にずれがあったとき、どの程度なら確認で足りて、どこからが見送りなのか。この線を、具体的な候補者の顔が見えていない状態で決めます。
あわせて、誰が判断するかも決めます。報告書を読む人と、最終的に採否を決める人が同じでよいのか。人事だけで完結させるのか、決裁者まで上げるのか。ここが曖昧なままだと、報告書が届いてから社内で止まります。
発注時に伝える2つの条件
依頼先を決めたら、契約と同時に次の2点を確定させます。どちらも提案書には書かれていないことが多く、こちらから伝えないと決まりません。
- 現職への照会を認めるかどうか。在籍中の候補者は、転職活動が現職に伝わることを避けたい場合があります。前職までに限る、在籍確認のみとする、といった条件を先に指定します
- 報告書を社内の誰まで共有するか。閲覧できる役割を人事の担当者と決裁者に限るのか、現場の面接官にも渡すのか。同意書に書く共有先と一致させる必要があります
依頼先そのものの選び方と、契約前に確認しておく質問は調査会社を比べる5つの軸と、契約前に聞く質問にまとめています。どの会社があるかを一覧で見たい場合はバックグラウンドチェック会社おすすめ10社の比較をご覧ください。
ステップ3|同意書に入れる7つの項目
同意書に入れるのは、調査の目的・調査を行う主体・取得する情報の項目・情報の取得方法・結果の共有先・保管期間・同意しない場合の扱いと撤回の可否の7つです。ひな形をそのまま使うのではなく、自社が実際に行う調査の内容に合わせて書き換える必要があります。
- 調査の目的|採用選考の判断に用いることを明記する。目的を書かずに「調査に同意する」とだけ書かれた文面は、何に同意したのかが特定できません
- 調査を行う主体|自社が行うのか、外部の調査会社に委託するのか。委託する場合は委託先の社名まで書きます
- 取得する情報の項目|学歴・職歴・資格など、実際に確認する項目を具体的に列挙する。「その他必要な事項」といった包括的な書き方は避けます
- 情報の取得方法|本人からの提出書類、公開されている情報、前職への照会など、どの経路で確認するかを示します
- 結果の利用範囲と共有先|社内の誰が閲覧するかを役割で示す。個人名ではなく、人事担当者と採用決裁者といった書き方にします
- 保管期間と期間経過後の取り扱い|いつまで保管し、その後どうするか。調査会社側の保管期間もあわせて確認して整合させます
- 同意しない場合の扱いと、同意の撤回の可否|同意しないことによる不利益の有無と、いつまで撤回できるかを書きます
これらのうち、目的・項目・取得方法・共有先の4つは、個人情報保護法が求める利用目的の明示に対応する部分です。本人から直接、書面で個人情報を取得する場合について、条文は次のように定めています。
個人情報取扱事業者は、前項の規定にかかわらず、本人との間で契約を締結することに伴って契約書その他の書面に記載された当該本人の個人情報を取得する場合その他本人から直接書面に記載された当該本人の個人情報を取得する場合は、あらかじめ、本人に対し、その利用目的を明示しなければならない。
個人情報の保護に関する法律 第21条第2項(e-Gov法令検索・一部省略)委託と第三者提供、どちらで整理するか
調査会社に候補者の情報を渡す行為をどう整理するかは、同意書の書き方に直接影響します。条文上、利用目的の達成に必要な範囲で取扱いを委託する場合、提供先は第三者に該当しないと定められています。
個人情報取扱事業者が利用目的の達成に必要な範囲内において個人データの取扱いの全部又は一部を委託することに伴って当該個人データが提供される場合
個人情報の保護に関する法律 第27条第5項第1号(e-Gov法令検索)一方で、委託する場合には別の義務が生じます。同法第25条は、委託した個人データの安全管理が図られるよう、委託を受けた者に対する必要かつ適切な監督を行わなければならないと定めています。外部に出したから責任も移る、という関係ではありません。
どちらの整理を取るにしても、候補者への説明としては、委託先の社名と取得方法を書いておくほうが実務は安定します。説明した範囲を超えない限り、あとから「聞いていない」という話になりません。自社の枠組みでどう整理するかは、法務部門や顧問の専門家と確認してください。関係する法令の全体像はバックグラウンドチェックは法律的に問題ない?で扱っています。
同意は、どの選考段階で誰が説明するか
同意の取得は、最終面接の前後から内定通知の前までに行い、説明の担当は人事に一本化します。現場の面接官には担わせません。選考の段階ごとに、誰が何をするかを先に割り振っておくと、候補者に届く説明が一定になります。
- 求人票・募集要項 実施する旨を記載する|担当:人事 採用選考の一環として調査を行う場合があることを、募集の段階で明記します。最終盤で初めて知らされる状態を作らないことが、後の同意取得を進めやすくします。
- 一次〜二次面接 選考プロセスの説明に含める|担当:人事 選考の流れを説明する場面で、後半に調査の工程があることを口頭で伝えます。この段階では同意書は渡さず、予告にとどめます。
- 最終面接の前後 同意書を提示し、書面で同意を得る|担当:人事 目的・項目・取得方法・共有先・保管期間を説明し、署名または電子的な同意をもらいます。質問には人事が回答します。面接の評価者とは別の場面にするのが基本です。
- 内定通知の前 報告書を受け取り、判断する|担当:人事・採用決裁者 事前に決めた基準に照らして判断します。内定を出したあとに報告書が届く運用にすると、調査が判断材料として機能しません。
- 内定通知の後 保管と削除の運用に移す|担当:個人情報の管理責任者 同意書と報告書を、決めた保管期間の管理下に置きます。期間経過後の取り扱いまで含めて、採用担当者個人の手元に残さない形にします。
説明を現場の面接官に任せない理由
説明の担当を人事に寄せる理由は2つあります。1つは、説明内容がぶれるからです。調査の範囲や保管期間を正確に説明できる人は限られます。面接官が良かれと思って補足した一言が、同意書に書いていない範囲まで約束してしまうことがあります。
もう1つは、評価への影響です。候補者を評価する立場の人が調査の中身に踏み込むと、報告書が届く前から先入観が入ります。面接の評価と調査の結果は、別々に出てきてから突き合わせるほうが精度が上がります。私が運用を組み直したときも、この分離を最優先にしました。
同意を取る場面で説明する4点
- なぜこの選考で調査を行うのか(目的)
- どの項目を、どの方法で確認するのか(範囲と手段)
- 結果を社内の誰が見て、いつまで保管するのか(共有先と期間)
- 同意しない場合にどう扱われるのか(不利益の有無)
この4点を口頭でも説明し、同じ内容が同意書にも書かれている状態にします。書面と口頭で違うことを言わない、という一点さえ守れば、この場面が難しくなることはほとんどありません。
ステップ4|調査会社に渡す書類と、受付が止まる原因
調査会社に渡すのは、同意書の写し・応募書類・調査項目の指定・照会条件の4点です。加えて、候補者から証明書類を追加で受け取る場合があります。書類そのものは多くありませんが、記載の抜けがあると受付が進みません。
| 同意書の写し | 署名または電子的な同意を得たもの。取得日が分かる形で渡します |
|---|---|
| 履歴書・職務経歴書 | 候補者から提出されたもの。氏名・生年月日・在籍期間の記載が照合の起点になります |
| 調査項目の指定 | 実施する項目と、必須・任意の区分。同意書に書いた項目と一致させます |
| 照会条件の指定 | 現職への照会の可否、照会先の範囲、連絡してよい時間帯など |
| 証明書類(任意) | 卒業証明書・在籍証明書・退職証明書・資格証明書など。候補者本人が発行元から取り寄せます |
受付が止まる原因は、書類の不備より「照会条件の空欄」です
応募書類の記載漏れは調査会社側から指摘が来るため、比較的すぐ解消します。止まりやすいのは、現職への照会を認めるかどうかが指定されていないケースです。調査会社は勝手に判断できないため、確認の連絡を入れて回答を待つことになります。ここで数日が消えます。発注時にこの条件を確定させておくと、納期の見込みが安定します。
証明書類は、依頼する前に取得日数を確認する
卒業証明書や退職証明書は、候補者本人が発行元に請求します。郵送のみの学校や、発行に1〜2週間かかる機関もあります。証明書類を必須にする設計なら、その日数を選考スケジュールに織り込んでおいてください。
納期の起算日が「必要書類がすべてそろった日」になっている契約では、この待ち時間は調査会社の納期に含まれません。契約書の起算日の定義と、証明書類の取得日数は、セットで確認する項目です。
ステップ5|報告書を受け取ってからの手順
報告書を受け取ったあとは、確認・照合・判断・保管の順に進めます。読んで終わりにせず、事前に決めた基準に当てて記録を残すところまでが1件の完了です。
最初に見るのは、各項目に情報源が書き分けられているかどうかです。本人の提出書類で確認した項目、公開情報で確認した項目、照会で確認した項目では、情報の確度が違います。同じ「確認済み」でも扱いは変わります。
次に、確認できなかった項目の記載を見ます。照会先が回答を断った場合や、情報が存在しなかった場合に、未確認と明記されているか。ここが空欄になっている報告書では、確認できたのか、そもそも調べていないのかが判別できません。疑義がある場合は再確認を依頼します。
そのうえで、事前に決めた基準に照らして判断します。申告と実態にずれがあった場合、まず本人に確認する機会を設けるかどうかも、基準に含めておいてください。確認せずに見送ると、単純な記載ミスと意図的な申告の違いを区別できないまま結論を出すことになります。
受け取ってからの4手順
①情報源の書き分けを確認する → ②未確認項目の記載を確認する → ③事前に決めた基準に照らして判断する → ④保管期間の管理下に置き、担当者の手元に残さない
保管では、報告書だけでなく同意書も対象にしてください。どの候補者に、いつ、どの範囲で同意を得たのかは、後から説明を求められる可能性がある記録です。保管場所と閲覧できる人を限定し、期間経過後の取り扱いまで決めておきます。
同意を断られたときの対応
同意を断られたときは、断る理由を確認したうえで、調査の条件を変えて合意できないかを探ります。断られた事実そのものを不利に扱う運用は避けてください。理由を聞いてみると、調査全体ではなく特定の工程だけが問題になっている場合があります。
現職に転職活動を知られたくない
確認すること
拒否の対象が調査全体なのか、現職への連絡だけなのかを切り分けます。多くの場合、後者です。
取れる対応
照会先を前職までに限る、現職については在籍確認のみとする、といった条件変更を提示します。調査会社にこの条件で対応できるかを確認したうえで、変更後の内容で同意書を作り直します。
調査そのものに納得できない
確認すること
何を調べられるのかについて、実際より広い理解をしていないかを確認します。私生活や思想信条まで調べられると受け取っているケースがあります。
取れる対応
同意書に書いた項目を示しながら、書いていない範囲は調べないことを説明します。それでも合意に至らない場合は、実施を見送るという判断もあります。無理に押し切ると、入社後の信頼関係に影響します。
どちらのケースでも、条件を変えたら同意書も作り直します。口頭で範囲を狭めただけで、書面が元のままという状態は作らないでください。説明した内容と書面が食い違う点が、いちばん争いになりやすい部分です。
依頼した企業側が負う責任と、調べてはいけない事項
外部の調査会社に依頼しても、候補者の個人情報を取得し利用する主体は、依頼した企業です。委託先の監督義務も依頼側にあります。調査会社の運用に任せきりにできる範囲は、思っているより狭いと考えておくほうが安全です。
調べる内容についても線引きがあります。厚生労働省は公正な採用選考の考え方として、応募者の適性・能力に関係のない事項を把握しないよう求めています。本人に責任のない事項(本籍・出生地、家族に関すること、住宅状況、生活環境など)と、本来自由であるべき事項(宗教、支持政党、人生観、思想、労働組合の加入状況など)が、その対象として挙げられています。
採用選考の方法についても記載があり、「身元調査などの実施」が、就職差別につながるおそれのある方法として挙げられています。
次のaやbのような適性と能力に関係がない事項を応募用紙等に記載させたり、面接で尋ねる、作文の題材とするなどによって把握することや、cのような採用選考の方法を実施することは、就職差別につながるおそれがあります。
厚生労働省「公正な採用選考の基本」(厚生労働省/2026年8月時点)この記載は、調査を否定するものとして読むより、範囲を絞る根拠として読むほうが実務に合います
同じ資料は、公正な採用選考の基本を応募者の適性・能力に基づいた基準により行うことと示しています。求人職種の職務遂行に関係する事項を、本人の同意を得て、必要な範囲で確認する設計にできているか。範囲を広げるほど、この説明が難しくなります。調査項目を絞ることは、費用の話であると同時に、手続きの説明可能性の話です。
個人情報の取扱いについては、求職者の個人情報の収集・保管・使用に関する規定が職業安定法にも置かれています。求職者等の個人情報の取扱いは同法第5条の5に定められており、第三者による解説記事には改正前の条番号が残っているものもあります。条文を確認する際はe-Gov法令検索の職業安定法で現行の条文をご覧ください。
当サイトの記載は一般的な情報提供であり、個別の法的助言ではありません。実際の運用にあたっては、条文と行政機関の資料を確認し、必要に応じて専門家にご相談ください。
よくある質問
Qバックグラウンドチェックはどうやって依頼すればいいですか?
依頼は、社内で調査範囲と判断基準を決め、依頼先を選んで契約し、候補者本人から書面で同意を得たうえで、同意書の写しと応募書類を調査会社に渡す流れで進みます。調査そのものは2〜5営業日が中心ですが、初回は社内の準備に時間がかかるため、2〜4週間を見込んでおくと余裕があります。
Q同意書にはどんな項目を書けばいいですか?
同意書に入れるのは、調査の目的・調査を行う主体・取得する情報の項目・情報の取得方法・結果の共有先・保管期間・同意しない場合の扱いと撤回の可否の7つです。取得する項目は「その他必要な事項」といった包括的な書き方を避け、実際に確認する項目を具体的に列挙します。外部に委託する場合は、委託先の社名まで書きます。
Q同意の説明は、人事と現場の面接官のどちらが行うべきですか?
説明は人事に一本化することをおすすめします。理由は2つあり、1つは調査の範囲や保管期間を正確に説明できる人が限られるため、担当が広がると説明内容がぶれることです。もう1つは、候補者を評価する立場の人が調査の中身に踏み込むと、報告書が届く前に先入観が入ることです。面接の評価と調査の結果は、別々に出てきてから突き合わせるほうが精度が上がります。
Q調査会社に提出する書類は何ですか?
提出するのは、同意書の写し・履歴書と職務経歴書・調査項目の指定・照会条件の指定の4点です。設計によっては、卒業証明書や在籍証明書などを候補者本人に取り寄せてもらいます。受付が止まりやすいのは書類の不備よりも、現職への照会を認めるかどうかが未記入のケースです。この条件は発注時に確定させておいてください。
Q候補者に同意を断られた場合はどうすればいいですか?
まず断る理由を確認し、調査全体を拒否しているのか、特定の工程だけを避けたいのかを切り分けます。在籍中の候補者では、現職への連絡だけが問題になっている場合が多く、照会先を前職までに限る条件変更で合意できることがあります。条件を変えたときは同意書も作り直してください。断られた事実そのものを不利に扱う運用は避けたほうが安全です。
Q調査会社に委託した場合、個人情報の責任は誰が負いますか?
個人情報を取得し利用する主体は、依頼した企業です。個人情報保護法は、個人データの取扱いを委託する場合、委託を受けた者に対する必要かつ適切な監督を行わなければならないと定めています。委託したことで責任が移る関係ではないため、委託先の情報管理体制と再委託の有無は契約前に確認してください。個別の判断は専門家にご相談ください。
まとめ
バックグラウンドチェックを依頼するには、社内で調査範囲と判断基準を決め、依頼先を選んで契約し、書面で同意を得てから応募書類とともに調査会社へ渡す方法です。社外とのやり取りより、社内で決めることのほうが時間を要します。
依頼を止めないための順番
①対象範囲と調査項目を決める → ②判断基準を報告書を見る前に文章にする → ③照会条件と共有範囲を発注時に確定させる → ④同意書を自社の調査内容に合わせて作る → ⑤説明の担当を人事に一本化して選考段階に組み込む
依頼先が決まっていない段階であれば、前職への照会を標準の工程に持つかどうかで候補は大きく絞れます。採用フィルター(フィルターバンク株式会社)は、公開情報とWeb・SNS情報に前職への電話インタビュー照会を統合したレポートを通常3営業日で提供し、就業中の職場については在籍確認のみを行うと明記しています。現職への配慮が必要な案件では、この線引きが明示されているかどうかが実務上の判断材料になります。
最後に一点だけ。調査は、面接で分かることの限界を埋める手段であって、採用の可否を決めてくれる仕組みではありません。範囲を広げれば費用と管理責任が増え、説明も難しくなります。何を確認したいのかを自社の言葉で決めてから依頼する。この順番さえ守れば、手続きそのものは複雑ではありません。
参照した公式情報
- 個人情報の保護に関する法律(e-Gov法令検索)
- 職業安定法(e-Gov法令検索)
- 公正な採用選考の基本(厚生労働省)
- 公正採用選考特設サイト(厚生労働省)
- 採用フィルター(フィルターバンク株式会社)


初めて導入したとき、いちばん時間がかかったのは調査会社とのやり取りではありませんでした。同意書の文面を確定させることと、それを選考のどこで誰が渡すのかを社内で合意することです。ここに数週間かかりました。逆に言えば、この2つが決まってからは、依頼そのものは数日で回るようになりました。