「うちの採用、なぜミスマッチが減らないんでしょうか」
中途採用の担当者から相談を受けるとき、いちばん多い切り出し方です。原因の候補はすでにいくつも挙がっていて、求人票の書き方も、面接の質問も、入社後のフォローも、思いつく限り手は打っている。それでも同じことが起きる、という状態です。
この記事では、採用のミスマッチを生む要因を5つに整理したうえで、その5つが対等ではなく、上流と下流の関係にあることを示します。公的統計から、企業側が採用を決める理由と候補者側が入社を決める理由がどこで食い違っているかも確認します。要因を並べるところでは止めず、自社ではどれが効いているのかを見分けるところまで扱います。
この記事の要点
- ミスマッチという言葉は、選考の時点ですでに確定していたずれと、入社後に生まれたずれの2つを同じ名前で呼んでいる
- 公的統計では、転職者が入社を決めた理由の上位と、辞めた理由の上位が同じ項目に並んでいる
- 企業が転職者の採用で重視した事項の1位は「人員構成の歪みの是正」43.8%で、候補者側の判断軸と起点が違う
- 要因は5つあるが対等ではなく、1つの起点から4つが下流に現れる依存関係になっている
- 下流の要因に個別の手を当てても再発するのは、症状と起点を取り違えているため
- 自社でどの要因が効いているかは、ずれが確定した時点をさかのぼることで見分けられる
目次
採用のミスマッチは、どこで生まれているのか
採用のミスマッチは、企業が想定していた職務内容・求める水準・労働条件と、入社した人が理解していたそれとが一致していない状態を指します。似た言葉に「アンマッチ」がありますが、こちらは選考の段階で条件が合わず採用に至らなかった状態を指すのが一般的です。アンマッチは選考の中で解消され、ミスマッチは採用が成立したあとに表面化します。
ただし、この定義のままでは原因を数えられません。実務でミスマッチと呼ばれているものは、性質の違う2つを同じ名前でまとめているためです。原因を考える前に、まずここを分けます。分けないまま数えると、打つべき手の置き場所が違うものが同じリストに並びます。
選考時点で確定していたずれと、入社後に生まれたずれ
前者は、内定を出した時点ですでに存在していたずれです。任せる仕事の内容、求める水準、労働条件の理解が、企業側と候補者側で食い違ったまま入社に至った状態を指します。後者は、入社後の配置変更、上司の交代、事業計画の変更などによって、入社時には存在しなかったずれが生まれた状態です。前者は採用の設計で扱える範囲にありますが、後者は採用の外側で起きています。同じ「ミスマッチ」という一語で扱うと、打つべき手の置き場所が分からなくなります。
この記事が扱うのは、主に前者です。後者は配置と受け入れの領域にあり、採用の要因として数えると、採用担当者が動かせない範囲まで抱え込むことになります。ただし後者にも、採用の設計から派生している部分があります。その線引きは、この記事の後半で扱います。
入社を決めた理由と、辞めた理由が同じ項目に並んでいる
ミスマッチがどこで生まれているかを考えるうえで、示唆的な統計があります。厚生労働省の転職者実態調査は、転職者本人に対して「現在の勤め先を選んだ理由」と「自己都合による離職の理由」の両方を尋ねています。同じ調査の中に、入る理由と出る理由が並んでいます。
| 軸 | 現在の勤め先を選んだ理由 | 自己都合による離職の理由 |
|---|---|---|
| 仕事の内容・職種 | 仕事の内容・職種に満足がいくから 41.0%(1位) | 満足のいく仕事内容でなかったから 26.0%(2位) |
| 労働条件(賃金以外) | 労働条件(賃金以外)がよいから 26.0%(3位) | 労働条件(賃金以外)がよくなかったから 28.2%(1位) |
| 賃金 | 賃金が高いから(上位3位に入らず) | 賃金が低かったから 23.8%(3位) |
| 能力の発揮 | 自分の技能・能力が活かせるから 36.0%(2位) | 能力・実績が正当に評価されないから(上位3位に入らず) |
選んだ理由の上位と、辞めた理由の上位が、ほぼ同じ項目で構成されています。仕事の内容と労働条件は、どちらの側にも上位で顔を出します。
ここから読めるのは、ミスマッチが「入社時には見えていなかった別の何か」によって起きているわけではない、ということです。入社を決めるときに判断材料の中心に置いた項目が、そのまま裏返って離職の理由になっています。判断材料そのものの精度が、ミスマッチの発生地点だという構図です。
もう一点、同じ調査の満足度の結果も付け加えておきます。転職後の満足度を項目ごとに見ると、満足と不満足の差は「仕事内容・職種」で60.5ポイントと最も高く、「賃金」で19.5ポイントと最も低くなりました。仕事の内容は、選ぶときの主軸であり、満足につながりやすく、同時に外れたときに離職理由の上位に来る項目でもあります。ここが最も重い軸だと考えて差し支えありません。
企業が採用を決める理由と、候補者が入社を決める理由
転職者実態調査には、もう1つ使いどころがあります。この調査は、転職者側と受入事業所側の両方に対して実施されています。
本調査は、転職者の就業実態及び意識を受入事業所側、転職者側の両面から把握することによって、円滑な労働移動を促進し、労働力需給のミスマッチの解消を図るための雇用対策に資することを目的とする。
令和2年転職者実態調査の概況(厚生労働省/2026年8月時点)両面から尋ねているということは、企業側の回答と個人側の回答を突き合わせられるということです。そして突き合わせると、判断の起点がずれています。
| 企業側が採用で重視した事項 | 人員構成の歪みの是正 43.8%/既存事業の拡大・強化 42.0%。事業所側の回答で最も多いのは、組織の人員配置上の課題を埋めることである |
|---|---|
| 候補者側が勤め先を選んだ理由 | 仕事の内容・職種に満足がいくから 41.0%/自分の技能・能力が活かせるから 36.0%。個人側の回答で最も多いのは、任される仕事の中身である |
企業は人員の穴から採用を起こし、候補者は仕事の中身で入社を決めています。この2つは、そもそも同じことを見ていません。
欠員が出たから採る、という判断自体に問題はありません。中途採用の多くは、実際にそこから始まります。問題は、欠員という起点のまま募集に進んでしまうと、候補者が最も重く見ている「任される仕事の中身」を言語化する工程が抜け落ちることです。抜け落ちたまま募集をかけると、候補者は自分の想像で不足を埋めます。その想像が実際と違えば、入社後に裏返ります。
要件定義で最初に決めるべきこと
「どんな人が欲しいか」ではなく、「この人が入って半年後に、何ができている状態なら成功か」を先に文章にします。人物像から入ると、経験年数やスキル名の羅列になり、候補者から見て仕事の中身が読み取れません。成功条件から入ると、任せる範囲・判断の権限・評価される成果が自動的に決まります。求人票も評価基準も、この文章から導けます。
ミスマッチを生む5つの要因
ここまでの整理をふまえて、要因を5つに分けます。この段階ではまだ並べるだけです。5つが対等ではないことは、次の見出しで扱います。
成功条件が定義されていない
採る理由が欠員のままで、入社後に何ができていれば成功かが文章になっていない状態です。人物像の要件は書かれていても、任せる範囲と成果の定義がない。この状態でも募集は出せてしまうため、抜けたまま先へ進みます。
求人票と面接での説明が抽象になる
任せる範囲が決まっていないため、書ける内容が一般的な表現に寄ります。候補者は不足を自分の想像で埋め、その想像を前提に入社を決めます。ネガティブな情報が伝わらないのも、多くは意図的な隠蔽ではなく、書ける材料がないためです。
評価基準が要件から導かれていない
何ができていれば成功かが決まっていないと、評価の観点も決まりません。結果として面接官それぞれの経験則で判断することになり、同じ候補者への評価が担当者によって割れます。評価が割れること自体より、割れた理由を検証できないことが効いてきます。
候補者側の申告と実態にずれがある
職務経歴の記載が、実際の関与範囲より広く読める状態になっている場合です。ここは候補者側に起因するため、企業側の設計だけでは消せません。ただし何を確認すべきかが決まっていなければ、ずれがあっても気づく機会そのものが生まれません。
配置と任せる範囲が、選考時の前提とずれる
入社後に、選考で説明していた仕事とは違う役割が与えられる状態です。組織変更や事業計画の変更で起きることもありますが、そもそも選考時の前提が曖昧だったために、受け入れ側が独自の解釈で配置しているケースも含まれます。
要因04について、この記事で扱うのはここまでです。申告と実態のずれがどの段階で表面化し、遅れて表面化したときに社内で何が起きるかは経歴詐称はどのくらい起きている?で扱っています。申告の照合と、一緒に働いた人から働きぶりを聞く手続きは性質が違うため、両方を検討する場合はリファレンスチェックとバックグラウンドチェックの違いを先に確認してください。
要因03についても、この記事では要件定義の帰結として扱うところまでにとどめます。面接という手段そのもので何が確認でき、何が確認できないかは中途採用の見極め方の担当範囲です。
5つの要因には上流と下流がある
ここがこの記事の中心です。5つの要因は、横に並ぶリストではありません。1つが起点にあり、そこから残りが下流に現れる関係になっています。
要因01|成功条件が定義されていない
入社後に何ができていれば成功かが文章になっていない状態です。この1つだけが、他の要因から生まれていません。採用の工程の最も手前にあり、ここが決まらないまま先に進むと、後続の工程はすべて材料不足のまま実行されます。
要因02|求人票と面接での説明が抽象になる
起点の直接の帰結です。任せる範囲が決まっていないものを、具体的に書くことはできません。書き方の研修や表現の工夫でどうにかしようとしても、材料がない以上は限界があります。情報開示が不足しているのではなく、開示できる情報がまだ作られていない状態です。
要因03|評価基準が要件から導かれていない
これも起点の直接の帰結です。成功条件がなければ、評価の観点を導けません。評価シートを整えても、そこに書く項目の出どころが担当者の経験則であれば、属人性は形を変えて残ります。基準の不在ではなく、基準の材料の不在です。
要因04|候補者側の申告と実態にずれがある
唯一、起点から生まれていない要因です。候補者側に起因するため、企業側の設計とは独立して存在します。ただし起点が弱いと、何を確認すべきかが決まらないため、ずれがあっても検知の機会自体が作られません。独立して存在しますが、検知できるかどうかは起点に依存します。
要因05|配置と任せる範囲が、選考時の前提とずれる
入社後に表面化するため、受け入れ側の問題として扱われがちな要因です。組織変更が原因の場合は採用の外側にありますが、選考時の前提が曖昧だったために受け入れ側が独自に解釈した場合は、起点の帰結が時間差で現れているだけです。どちらなのかは、選考時の資料を見れば切り分けられます。
5つのうち4つは起点から派生しており、起点を動かさずに下流だけを整えても、形を変えて再び現れます
この構造は、多くの解説で採られている「原因を5つ挙げて、それぞれに対策を1つずつ当てる」という組み立てとは相性がよくありません。原因と対策を1対1で結ぶ前提は、原因どうしが独立していることです。依存関係がある場合、下流の原因に当てた対策は、上流が動かない限り効果が続きません。
下流の要因に手を当てても再発する理由
実務で見えているのは、たいてい下流です。求人票への応募が集まらない、面接官の評価が割れる、入社した人が半年で辞める。どれも目に見える形で起きるため、そこに手を当てたくなります。
ただし、目に見えている場所と、それが生まれた場所は違います。3つを分けて並べます。
| 見えている状態 | 手を当てがちな場所 | 実際の起点 |
|---|---|---|
| 入社後に「思っていた仕事と違う」と言われる | 求人票の文言を見直す。面接での説明を厚くする | 任せる範囲が決まっていないため、具体的に書ける材料がそもそもない |
| 面接官によって評価が割れる | 評価シートを配る。面接の進め方を統一する | 評価の観点を導く元になる成功条件が存在しない |
| 経験は十分なのに立ち上がらない | オンボーディングを手厚くする。研修を追加する | 選考で見ていた経験と、実際に必要な動き方が対応していない |
| 配属先から「聞いていた人材と違う」と言われる | 配属前の面談を増やす。人事と現場の連携を強める | 選考時に合意した前提が文書になっておらず、受け入れ側が独自に解釈している |
| 職務経歴の記載と実際の関与範囲が食い違う | 面接で深掘りする質問を増やす | 何を確認すべきかが決まっていないため、深掘りの的が定まらない |
中央の列に書いた手当てが無駄だという話ではありません。いずれも実施する価値はあります。ただし右の列を放置したまま中央だけを繰り返すと、同じ問題が次の採用でも出ます。手当ての効果が続かないときは、当てている場所が症状の側である可能性を先に疑ってください。
もうひとつ、繰り返すこと自体のコストがあります。同じ職種で同じ種類のずれが二度三度と起きても、そのたびに違う手当てを試していると、何が効いて何が効かなかったのかが記録として残りません。次の採用も、同じ手探りから始まります。募集の頻度が高くない部門ほど、この積み上がらなさが効いてきます。原因を特定する作業には、今回のずれを解消する以上に、次回の判断材料を作るという意味があります。
辞めた理由の統計から、要因の重みを見る
要因の順序が分かったところで、それぞれがどのくらいの重みを持つのかを、公的統計から確認します。厚生労働省の雇用動向調査は、転職して入職した人に対して前職を辞めた理由を尋ねています。
まず、この数字の読み方の前提を確認しておきます。表には次の注記が置かれています。
転職入職者のうち前職雇用者で調査時在籍者についてみたものである(自営業からの転職入職者を含まない)。
令和6年雇用動向調査結果の概況 表5の注記(厚生労働省/2026年8月時点)集計されているのは、辞めたあとに再び入職した人です。辞めてそのまま就業していない人は入りません。したがって、離職の理由そのものの全体像ではなく、転職という形で移動した人に限った分布として読む必要があります。
| 理由 | 男 | 女 |
|---|---|---|
| 給料等収入が少なかった | 10.1% | 8.3% |
| 労働時間、休日等の労働条件が悪かった | 8.6% | 12.8% |
| 職場の人間関係が好ましくなかった | 9.0% | 11.7% |
| 会社の将来が不安だった | 7.4% | 5.1% |
| 仕事の内容に興味を持てなかった | 4.4% | 3.6% |
| 能力・個性・資格を生かせなかった | 3.8% | 3.7% |
採用の現場で語られるミスマッチは、多くの場合「見極めの精度」の話に寄ります。能力を正しく測れていたか、適性を見抜けていたか、という論点です。ところがこの表では、能力・個性・資格を生かせなかったという理由は男3.8%・女3.7%にとどまり、上位には来ていません。上に来ているのは、収入、労働時間や休日、人間関係、会社の将来といった項目です。
この数字を「見極めは重要ではない」と読まないでください
選択肢の設計上、能力を生かせなかったという状態が、労働条件や人間関係への不満として表明されることは十分にあります。また離職理由の申告は、本人が最も説明しやすい形を選んだ結果でもあります。この表から言えるのは、見極めの精度が唯一の論点ではないということまでです。順位そのものを因果の強さとして扱うのは、統計の読み方として無理があります。
そのうえで、実務に効く読み方をひとつ挙げます。上位に並んでいる項目は、収入も、労働時間や休日も、会社の将来も、いずれも選考の段階で企業側から説明できる情報です。人物の見極めが難しい領域にあるのに対して、これらは伝えるか伝えないかで決まります。そして何をどこまで伝えるかは、要件定義で任せる範囲を決めたかどうかに左右されます。ここでも起点は同じ場所にあります。
自社でどの要因が効いているかを見分ける
ここまでの構造を、自社の状況に当てはめる作業に落とします。この記事では要因の特定までを扱い、特定した要因に対して何をするかは扱いません。
まず、いま起きているずれが選考の時点で確定していたのか、入社後に生まれたのかを分けます。ここが分かれ目になります。
選考時点で確定していたずれの兆候
- 本人が「違う」と感じた時期をさかのぼると、入社直後まで戻る
- 選考時の説明資料に、任せる範囲や成果の定義が書かれていない
- 面接官の評価コメントが、事実の記述ではなく印象の表現で書かれている
- 同じ職種の募集で、過去にも同じ種類のずれが起きている
入社後に生まれたずれの兆候
- 入社から一定期間は問題なく、特定の出来事を境に変化している
- 選考時の資料と実際の職務内容が、入社時点では一致していた
- 組織変更、上司の交代、事業計画の変更が間に入っている
- 同じ部署の既存社員にも、同時期に同じ種類の不満が出ている
右側に当てはまる場合、原因は採用の設計の外側にあります。採用側で対応しようとしても、動かせる範囲に入っていません。左側に当てはまる場合は、次の項目をさかのぼって確認します。
- 募集を起こした依頼票に、成功条件が文章で書かれているか|書かれていなければ、起点は要因01
- 求人票の職務内容が、他社の同職種の求人と入れ替えても成立しないか|入れ替えて成立するなら、要因02が出ている
- 評価の観点が、依頼票の成功条件から導かれた形になっているか|面接官の経験則で作られているなら、要因03
- 選考で確認すると決めた事項の一覧が、事前に存在していたか|存在しなければ、要因04を検知する機会がなかった
- 選考時に合意した任せる範囲が、配属先と文書で共有されていたか|口頭のみなら、要因05は起点の帰結の可能性がある
- 同じ職種で過去2回以上、同種のずれが起きていないか|繰り返しているなら、当てている手が症状側である
この6項目のうち、最初の1つに該当した時点で、以降の項目も連鎖して該当している可能性が高くなります。上から順に確認し、最初に該当した場所を起点として扱ってください。下から順に見ると、症状のほうを起点と誤認します。
なお、要因04の確認手段については、何がどこまで確かめられるかに技術的な範囲があります。提出書類・公開情報・第三者への照会という3つの手段それぞれで何が確認でき、何が確認できないかはバックグラウンドチェックで何を調べるかで整理しています。確認の手段を増やすこと自体は、要因01から03には効きません。ここを混同すると、調査の範囲だけが広がって採用力が落ちます。
この記事の担当範囲はここまでです
どの要因が起点かが分かったら、次は選考のどの段階で何を変えるかという設計に移ります。要件定義の書き方、求人票への落とし込み、面接の設問設計、内定後の情報提供といったフェーズ別の対策は中途採用のミスマッチを防ぐには?選考フェーズ別の対策で扱っています。起点を特定しないまま対策から入ると、下流に手を当てて終わります。順序はこの記事が先です。
よくある質問
Q採用のミスマッチはゼロにできますか?
ゼロにはなりません。要因05のように入社後の組織変更から生まれるずれは、採用の時点では存在していないため、選考の設計では扱えません。また要因04は候補者側に起因するため、企業側の設計だけでは消せません。現実的な目標は、ゼロにすることではなく、起点にあたる要因01を動かして、そこから派生する要因02・03・05を減らすことです。派生していない部分は残ります。
Qミスマッチの原因は、面接での見極めが甘いからですか?
見極めは要因の1つですが、起点ではありません。何ができていれば成功かが決まっていなければ、評価の観点を導けないため、面接官は自分の経験則で判断することになります。この状態で面接の手法だけを整えても、判断の基準そのものは変わりません。加えて雇用動向調査では、前職を辞めた理由のうち「能力・個性・資格を生かせなかった」は男3.8%・女3.7%にとどまり、収入や労働時間、人間関係が上位に来ています。見極めが唯一の論点ではないと考えてください。
Q新卒採用と中途採用で、ミスマッチの原因は違いますか?
起点は共通していますが、下流への現れ方が違います。新卒では就業経験がないため、候補者側が仕事の中身を具体的に想像できず、要因02の影響が大きく出ます。中途では前職での経験がある分、候補者は職務内容の記述から具体的な仕事を想像しますが、その想像が前職の基準で作られるため、同じ職種名でも実際の役割が違うというずれが生まれます。この記事は中途採用を前提に整理しています。
Q退職者に理由を聞けば、ミスマッチの原因は分かりますか?
そのままでは分かりません。退職時に本人が挙げる理由は、決断に至った最後の要素であることが多く、直近の出来事に寄ります。原因を特定するには、理由ではなく時期を聞いてください。「どの時点で、思っていたのと違うと感じたか」という質問に対して、答えが入社直後まで戻る場合は、選考の設計に起点があります。特定の出来事を境にしている場合は、入社後に生まれたずれです。この切り分けができれば、聞き取りは原因の特定に使えます。
Qバックグラウンドチェックやリファレンスチェックを入れれば、ミスマッチは減りますか?
効くのは要因04に対してだけです。申告と実態のずれを確認する手段であり、成功条件が定義されていないこと、求人票が抽象になっていること、評価基準が導かれていないことには作用しません。加えて、確認する項目は選考で何を判断したいかが決まって初めて選べます。起点を放置したまま確認の範囲だけを広げると、候補者に求める手続きが増えて選考の負担が上がり、採用力そのものが落ちます。順序としては、要件定義を先に固めてから導入を検討してください。
まとめ
採用でミスマッチが起きる原因を、5つの要因として整理しました。要点をもう一度並べます。
ミスマッチという言葉は、選考の時点で確定していたずれと、入社後に生まれたずれの2つを指しています。まずここを分けることが、原因を特定する前提になります。
公的統計では、転職者が勤め先を選んだ理由の上位と、自己都合で辞めた理由の上位が同じ項目に並んでいました。入社時に判断材料の中心に置いた項目が、そのまま裏返っています。そして企業側が採用で重視した事項の1位は人員構成の歪みの是正で、候補者側が最も重く見る仕事の中身とは起点が違っていました。
5つの要因は対等ではありません。成功条件が定義されていないという1つの起点から、求人票の抽象化、評価基準の属人化、配置と前提のずれが下流に現れます。申告と実態のずれだけが独立して存在しますが、それを検知できるかどうかは起点に依存します。下流に手を当てても再発するのは、症状と起点を取り違えているためです。
自社でどの要因が効いているかは、ずれが確定した時点をさかのぼることで見分けられます。募集の依頼票に成功条件が書かれているかどうかから確認し、最初に該当した場所を起点として扱ってください。
そのうえで、特定した起点に対して選考のどの段階で何を変えるかは、選考フェーズ別に整理した対策で扱っています。この記事は原因の構造までを担当しています。
参照した公式情報
情報の取得時点:2026年8月。統計の数値は各調査の公表資料に基づきます。調査は改定・更新される場合があり、個別の事案への当てはめは自社の実態に照らしてご判断ください。

選考時の評価と入社後のパフォーマンスを突き合わせる作業を、何年か続けてきました。そこで一度、説明のつかない結果に当たったことがあります。面接の評価が高かった採用者のほうが、早期に離職している時期があったのです。最初は面接官の目を疑いました。ただ、評価票を見直しても、評価そのものはきちんと付いていました。疑うべきは面接ではなく、その前にある要件定義のほうだと考え直したのが、この記事の出発点です。