リファレンスチェックとバックグラウンドチェックの違いと使い分け

リファレンスチェックとバックグラウンドチェックの違いを、事実の照合と評価の収集という2つのカードで対比した図
結論バックグラウンドチェックは申告された経歴が事実かどうかを照合する手法、リファレンスチェックは一緒に働いた人から働きぶりの評価を集める手法です。集まる情報の性質が違うため、どちらか一方があればもう一方が不要になるという関係ではありません。

「両方やる必要がありますか。似たようなものに見えるのですが」

導入を検討している段階で、社内からこう聞かれた採用担当の方は少なくないはずです。名前が似ていて、どちらも第三者に確認するという点も共通しているため、重複しているように見えます。実際に両方を運用してみると、この2つは判断材料としての役割がはっきり分かれていました。

この記事では、2つの手法を「事実の照合」と「評価の収集」という軸で分けたうえで、情報の出どころ、推薦者を候補者が選ぶという構造から生じる偏り、同意の取り方の違い、両方実施する場合の順序まで扱います。

採用調査ナビ 執筆者 佐久間 洋平 佐久間 洋平

2つの違いを社内に説明するとき、私は「片方は答え合わせ、片方は人物評」という言い方をしています。答え合わせには正解があり、人物評には正解がありません。求めているものが答え合わせなのに評価を集めても、知りたかったことは分からないままです。逆もまた同じでした。目的を先に言葉にしておくと、どちらを選ぶかで迷う場面はかなり減ります。

この記事の要点

  • 2つの違いは調べる相手ではなく、集める情報が事実の照合か、評価の収集かという性質にある
  • リファレンスチェックは回答する人を候補者本人が選ぶという構造を持ち、そこから回答の偏りが生じる
  • 偏りは前提として織り込み、役割の指定と設問の設計で補正する
  • 同意の対象者が候補者と推薦者の2人になり、取得の形式によって説明の仕方が変わる
  • 両方実施する場合は事実の照合を先、評価の収集を後に置くと、後の工程の読み方が定まる
  • 推薦者を出せない候補者がいることは前提であり、出せないこと自体は何も語っていない

2つの違いは「事実の照合」か「評価の収集」か

2つの手法を分ける軸は、調べる相手の違いではありません。集めた情報が「照合できるもの」なのか「照合できないもの」なのかという性質の違いです。ここを押さえると、他の違いはすべてここから導けます。

01

バックグラウンドチェック|事実の照合

申告された学歴・職歴・資格などが、記録と一致しているかを確かめます。卒業証明書や源泉徴収票といった提出書類、公開情報、前職の人事部門への照会が主な手段です。答えは合っているか、合っていないか、確認が取れなかったかのいずれかに収まります。

02

リファレンスチェック|評価の収集

候補者と一緒に働いた経験のある人から、仕事の進め方や周囲との関わり方についての見解を集めます。回答するのは候補者が指定した推薦者です。得られるのは記録ではなく個人の見方であり、正解と突き合わせて検証する対象にはなりません。

この違いは、投稿の中で触れてきた前職への照会の限界とつながっています。前職の人事部門に問い合わせて確認できるのは、在籍期間や退職の事由といった記録に残っている事項です。その人がどう働いたかという評価は、記録として残っていないため出てきません。項目ごとの確認手段と限界はバックグラウンドチェックの調査項目と調査の限界で整理しています。

2つの手法の対比|軸・バックグラウンドチェック・リファレンスチェック
軸 バックグラウンドチェック リファレンスチェック
確かめるもの 申告された経歴が事実かどうか 一緒に働いた人から見た、仕事の進め方や関わり方
情報の出どころ 提出書類・公開情報・前職の人事部門への照会 候補者が指定した推薦者
回答する人を決めるのは 依頼した企業と調査会社。照会先は勤務先の記録から特定する 候補者本人。企業が指定できるのは役割や条件までにとどまる
結果の形 記録との一致・不一致・確認できず 設問ごとの回答。複数人であれば見方の差も含む
選考での使いどころ 申告内容を前提にしてよいかの判断 面接評価の補強と、配属や任せ方の設計

両方を運用していると、判断に迷う場面がそもそも違うことに気づきます。事実の照合で迷うのは「確認が取れなかった」と書かれたときだけです。評価の収集では、回答が出てきた後に、それをどう読むかという作業が必ず残ります。

情報の出どころと、照会先を誰が決めるか

確認手段は、公開情報・提出書類・第三者への照会の3つに分けて考えると整理できます。リファレンスチェックはこのうち3つめに属しますが、同じ「第三者への照会」でも、照会先を誰が決めるかで性質が変わります。

在籍確認

申告どおりの期間に在籍していたかを、勤務先の人事部門に問い合わせて確かめます。照会先は履歴書の記載から特定するため、企業側と調査会社が決めます。回答の負担が軽く、事実の有無だけを扱います。

経歴照会

在籍の事実に加えて、職位・職務内容・勤怠・退職の事由まで前職に確認します。こちらも照会先は勤務先であり、応対するのは人事部門や総務部門です。記録を確認する工程が入るため、回答までに時間がかかります。

リファレンスチェック

候補者が指定した個人に対して、仕事ぶりについての見解を尋ねます。応対するのは組織ではなく、上司や同僚といった個人です。照会先を決めるのは候補者本人で、ここが他の2つと構造的に違います。

照会先が組織か個人かという違いは、回答の性質にそのまま表れます。人事部門は記録を見て答えるため、担当者が代わっても回答は変わりません。個人は記憶と印象で答えるため、誰が答えるかによって内容が変わります。どちらが優れているかではなく、質の違う情報が出てくると理解しておくことが出発点になります。

実施主体も分かれる

バックグラウンドチェックは、書類の真正性の確認や照会先の窓口特定といった工程を含むため、外部の調査会社に委託する形が中心です。リファレンスチェックは、質問票を用意して推薦者に回答してもらう形であれば、企業の採用担当が自社で実施することもできます。オンラインで完結するサービスを使って外部に委託する形も広く使われています。

両方を1つのサービスに含めている事業者もあります。たとえば採用フィルター(フィルターバンク株式会社)は、公的公開情報・Web情報・SNS情報の精査と、在籍していた職場へのインタビュー照会を組み合わせ、結果を統合してレポーティングすると公表しています。サービスの構成が事業者ごとに違うため、名称だけで判断せず、どの工程が含まれているかを確認してください。

確認手段を整理するときの言い方

見積もりや提案書を読むときは、項目の一覧ではなく項目 × 情報源の対応で出してもらいます。情報源が公開情報・提出書類・第三者への照会のどれに当たるか、第三者への照会であれば照会先を決めるのが企業側か候補者側かまで確認すると、同じ価格帯に見えたサービスの中身が分かれます。

推薦者を候補者が選ぶ構造から、何が起きるか

リファレンスチェックで最も重要な性質は、回答する人を候補者本人が選ぶことです。候補者は自分に不利な回答をしそうな相手をあえて選びません。これは候補者に問題があるという話ではなく、そういう仕組みだというだけの話です。

この構造を前提として認めたうえで、どう補正するかを設計します。偏りをなくすことはできませんが、どの方向に偏るかは予測できるため、手当ての打ちようがあります。

回答の偏り方・なぜ起きるか・企業側の手当て
偏り方 なぜ起きるか 企業側の手当て
評価が全体的に高くなる 候補者が良好な関係の相手を選ぶため、否定的な見方を持つ人は最初から候補に入らない 評価の高低を尋ねる設問を減らし、具体的な行動や場面の記述を求める設問に置き換える
直近の職場に集中する 連絡先を把握している相手が直近に限られ、古い職場の関係者には依頼しにくい 在籍期間の重なりを条件として指定する。確認したい経歴が古い場合はその旨を先に伝える
同じ立場からの見え方に寄る 同僚どうしなど関係性が近い相手が選ばれ、指示を受ける側からの見え方が入らない 上位者から1名、同僚または部下から1名という役割の指定を出す
課題や改善点が出てこない 推薦者が候補者の不利益になる回答を避け、無難な記述にとどめる 短所を尋ねる形ではなく、どういう環境や任せ方であれば力を発揮しやすいかを尋ねる形にする
回答が揃いすぎる 候補者が推薦者に依頼する段階で、経緯や希望を共有している 複数の推薦者に同じ設問を1つ置き、回答の差がどこに出るかを見る

上位に出てくる解説記事の多くは、リファレンスチェックについて「ポジティブな情報も集められる」という説明で終えています。ポジティブな情報が集まりやすいのは事実ですが、それは候補者が選んだ相手が答えているからです。この構造まで説明していないと、集まった高評価をそのまま実力の証明として読んでしまいます。

推薦者から出てきやすい情報

  • 得意とする仕事の進め方や、力を発揮した場面の具体例
  • チームの中で担っていた役割と、周囲との関わり方
  • どういう指示の出し方が合っていたかという運用上の示唆
  • 面接では聞き出しにくい、日常的な仕事のリズム

推薦者からは出てきにくい情報

  • 在籍期間や職位といった、記録に照らして確かめる事項
  • 候補者と関係が良くなかった相手から見た評価
  • 推薦者が同席していなかった場面での振る舞い
  • 退職の経緯のうち、当事者間でしか共有されていない事情
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質問票を作り直したとき、私は評価を点数で聞く設問を減らして、場面を書いてもらう設問に寄せました。点数はほとんど高い側に張り付きますが、場面の記述は推薦者ごとに違う内容が出てきます。違いが出ること自体が読み取りの手がかりになるので、設問は「差が出るかどうか」を基準に選ぶようにしています。

企業側が指定できること、できないこと

推薦者の人選そのものに企業が踏み込むことはできません。企業が指定できるのは、人数、役割、在籍期間の重なりといった条件までです。特定の個人を名指しして回答を求める形にすると、候補者の現在の職場に転職活動が伝わる経路を企業側が作ることになります。

条件の指定は、依頼する時点で候補者に伝えます。後から追加すると、候補者は一度依頼した推薦者に再度連絡することになり、負担が重くなります。実施すると決めた段階で、必要な人数と役割を確定させておいてください。

2つの手法で最も実務的な違いが出るのが、同意を得る相手が変わる点です。バックグラウンドチェックで説明する相手は候補者本人ですが、リファレンスチェックでは推薦者という別の個人の情報も扱うことになります。

候補者に対しては、同意書という書面で説明と同意の取得を行う運用が一般的です。個人情報保護法は、本人から直接書面に記載された個人情報を取得する場合に、あらかじめ利用目的を明示することを求めています。同意書に入れる項目と社内の役割分担はバックグラウンドチェックを依頼する流れと同意の取り方で扱っています。

推薦者については、扱いが少し変わります。推薦者の氏名・連絡先・所属といった情報を企業が受け取り、回答を記録として残す以上、推薦者本人の個人情報を取り扱うことになるためです。

個人情報取扱事業者は、個人情報を取得した場合は、あらかじめその利用目的を公表している場合を除き、速やかに、その利用目的を、本人に通知し、又は公表しなければならない。

個人情報の保護に関する法律第21条第1項(e-Gov法令検索/2026年8月時点)

取得の形式によって、どの手続きに当たるかが変わります。推薦者がオンラインの質問票に自ら記入する形であれば、本人から直接書面で取得する場面に近づきます。電話やオンライン面談で聞き取る形であれば、書面への記載を伴わない取得になります。どちらの形を採るかは実施方法を決める段階で確定するため、その時点で説明の出し方も合わせて決めておくと運用が揃います。

職業安定法の規定が対象としているのは、求職者側の個人情報です

職業安定法第5条の5第1項は、求人者や労働者の募集を行う者などを名宛人として、求職者、労働者になろうとする者又は供給される労働者の個人情報の取扱いを定めています。条文が挙げているのは求職者側であり、推薦者はこの列挙に含まれていません。推薦者の情報をどの枠組みで整理するかは、実際の取得方法と目的に照らして、法務部門や専門家に確認してください。関係する法令の全体像はバックグラウンドチェックと法律の関係で扱っています。

実務としては、次の3点を決めておくと説明が通ります。推薦者に伝える利用目的の文面、回答を閲覧できる社内の範囲、そして回答の保管期間です。推薦者は自社の選考の当事者ではないため、社内で扱いの前提が共有されていないと、報告書が想定より広く回覧されることがあります。

なお、これは一般的な情報提供であり、個別の法的助言ではありません。自社の運用がどう位置づけられるかは、実際の実施方法に即して確認してください。

両方やる場合の順序と、結果が食い違ったときの扱い

両方を実施する企業では、順序をどう置くかで後の読み取りやすさが変わります。結論としては、事実の照合を先に置き、評価の収集を後に置く形が扱いやすくなります。

1

申告された経歴の照合を先に行う

在籍期間・職位・雇用形態が申告どおりかを先に確かめます。ここで結果が出ていれば、次の工程で聞く相手の立場や、聞くべき期間の前提が定まります。

2

照合結果を踏まえて、設問と推薦者の条件を決める

確認が取れなかった箇所や、申告と記録にずれがあった箇所が分かっていれば、その期間に在籍が重なる推薦者を条件として指定できます。設問も、確かめたい点に寄せられます。

3

評価の収集を行い、面接評価と突き合わせる

推薦者の回答は、面接での見立てが合っていたかを確かめる材料として読みます。単独で採否を決める材料ではなく、面接評価の補強と、入社後の任せ方の設計に使います。

4

結果が食い違ったときの扱いを、事前に決めておく

事実の照合で出た結果と、推薦者の回答が食い違う場面があります。どちらを優先するかを、実施を決めた段階で社内で確定させておきます。

逆の順序にすると、推薦者の回答を読む時点で経歴の前提が固まっていないため、評価の記述をどの期間の話として読めばよいかが分かりません。工期の都合で並行して走らせる場合も、報告書を読む順番だけは事実の照合から始めてください。

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推薦者からの評価が3名とも良好だった候補者で、在籍期間の申告にずれが見つかったことがあります。推薦者の回答に嘘があったわけではありません。一緒に働いた実感としては、その人たちの書いたとおりだったのだと思います。ただ、その期間の始まりと終わりは、推薦者が確かめて答える性質のものではありませんでした。評価が良好だったことと、申告が正確だったことは別の話だと、このとき初めて分けて考えるようになりました。

CASE

推薦者の評価は高いが、経歴の照合で確認が取れなかった

在籍期間や職位について、申告と記録にずれがある、または確認が取れないと報告された場面

確認すること

まず、確認が取れなかったのか、記録と食い違っていたのかを区別します。前者は照会先が回答しなかったという照会先側の事情であり、候補者について何も語っていません。後者であれば、どの項目がどうずれているかを特定します。推薦者の評価が高いことは、この区別には影響しません。

取れる対応

記録との食い違いが確認できた場合は、候補者本人に事実関係を尋ねる場を設けます。転記の誤りや、契約形態の認識違いが原因であることもあります。評価の収集で得た情報は、この場面では判断材料に入れません。事実の照合で出た結果は照合で決着させ、評価はそのまま評価として扱う。この線を引いておくと、社内での説明が揺れなくなります。

自社はどちらを実施するか、判断の分かれ目

どちらを実施するかは、採用したいポジションで判断に使う情報が、どちらの性質かによって決まります。ポジションごとに変えて構いません。全件で両方実施する必要はありません。

Q1

申告された経歴の裏づけが取れていないと、その先の判断ができないポジションか

金銭や個人情報を扱う職種、有資格者であることが前提の職種、管理職以上のポジションが当てはまります。ここに該当するなら、事実の照合を優先します。評価の収集だけを実施しても、申告が正しいかどうかは分からないままです。

Q2

入社直後の任せ方や配属を、選考の段階で決めておきたいか

受け入れ先のチームが決まっていて、どう任せるかを事前に設計したい場合は、評価の収集が効きます。仕事の進め方や、どういう環境で力を発揮しやすいかという情報は、記録の照合からは出てきません。

Q3

候補者の多くが在職中か

在職中の候補者が中心であれば、照会先の設計を先に決めます。現職への連絡を含めるかどうかは、どちらの手法でも候補者にとって重い論点です。現職を対象から外す前提で、確認できる範囲を組み立ててください。

Q4

選考スケジュールに、どれだけの日数を確保できるか

事実の照合は照会先の窓口を特定する工程が入り、評価の収集は推薦者が回答する時間に左右されます。所要日数の決まり方が違うため、両方実施する場合は工程を並べて逆算します。内定通知の前に結果が出そろう設計にしておきます。

判断に使う情報が「照合できるもの」なら事実の照合、「照合できないもの」なら評価の収集。両方必要なら順序を決める

費用と依頼先の考え方

費用の決まり方も2つで違います。事実の照合は確認する項目の数と、人を介した照会を含むかどうかで変わります。評価の収集は推薦者の人数と、回答を得るまでの工程で変わります。同じ「1名あたり」という表示でも、何が単位になっているかが違うため、見積もりは条件をそろえて比べてください。項目別の目安と価格差が生まれる理由はバックグラウンドチェックの費用相場で扱っています。

依頼先を、専門の調査会社に置くかオンライン完結型のサービスに置くかという論点もあります。これは手法の違いとは別の軸なので、調査会社の選び方と比較すべき5つの軸を参照してください。名称に「リファレンスチェック」と付いていても事実の照合を含むサービスがあり、逆もあります。

  • 対象にするポジションの範囲|全件か、職種と役職で絞るかを先に決める
  • 判断に使う情報が、照合できるものかどうか|ポジションごとに1行で書き出す
  • 推薦者に指定する人数と役割|上位者と同僚のどちらを何名にするかを確定させる
  • 現職を照会や依頼の対象に含めるか|含めない前提で組み立て、例外の条件を決める
  • 両方実施する場合の順序と、報告書を読む順番|事実の照合を先に置く
  • 結果が食い違ったときにどちらを優先するか|実施を決めた段階で社内で確定させる
  • 推薦者の情報を閲覧できる社内の範囲と保管期間|個人名ではなく役割で定める

推薦者を出せない候補者への対応

リファレンスチェックには、事実の照合にはない前提があります。候補者が推薦者を確保できなければ、そもそも実施できません。ここを見落とすと、実施できなかったこと自体を評価に読み替えてしまいます。

推薦者を出せない事情はいくつもあります。在職中で現職の同僚には頼めない、前職を離れて年月が経ち連絡先が分からない、前職の退職経緯が個人的なもので依頼しづらい。いずれも候補者の能力とも誠実さとも関係がありません。

!出せないことを、隠し事の証拠として扱う

推薦者を出せない理由の多くは、人間関係と時間の経過によるものです。出せないという事実から候補者について読み取れることはありません。実施できなかった場合の選考上の扱いを、実施を決めた段階で決めておいてください。決めていないと、担当者ごとに解釈が変わります。

!企業側が推薦者を指名して連絡する

候補者が出せないからといって、企業が前職の知人を探して連絡する形にすると、候補者の同意の範囲を超えます。在職中であれば、転職活動そのものが現職に伝わる経路を作ることにもなります。指定できるのは役割や条件までにとどめてください。

!代わりに現職への照会に切り替える

評価が集まらないからと現職の人事部門に連絡すると、候補者にとって最も避けたい事態になります。現職に対する照会は在籍確認にとどめる設計が広く採られており、その範囲を超える切り替えは、候補者との信頼関係を先に失います。

実施できないときに、代わりに置ける手当て

推薦者が確保できない場合でも、判断材料を増やす方法はあります。面接で扱う場面の粒度を上げること、実務に近い課題を選考に組み込むこと、そして事実の照合を確実に行うことです。評価の収集ができないぶんを、面接設計と事実確認の側で埋める形になります。

採用選考は、応募者の適性と能力に基づいた基準で行うことが基本とされています。推薦者を用意できたかどうかは適性でも能力でもありません。実施の有無が選考の合否に直結しない設計にしておくことが、運用上も説明上も無理がありません。

よくある質問

Qリファレンスチェックとバックグラウンドチェックは何が違いますか?

集まる情報の性質が違います。バックグラウンドチェックで集まるのは、記録と照らして一致しているかどうかを確かめられる情報です。学歴・職歴・資格などが対象で、結果は一致・不一致・確認できずのいずれかに収まります。リファレンスチェックで集まるのは、一緒に働いた人から見た仕事の進め方や関わり方という、照合する正解を持たない情報です。前者は申告を前提にしてよいかの判断に使い、後者は面接評価の補強と入社後の任せ方の設計に使います。

Qどちらか一方だけでも足りますか?

判断に使う情報がどちらの性質かによって決まります。申告された経歴の裏づけが取れていないと先に進めないポジションであれば、事実の照合を優先します。入社直後の任せ方や配属を選考の段階で設計したい場合は、評価の収集が効きます。金銭や個人情報を扱う職種、管理職以上のポジションでは前者の優先度が上がりやすく、全件で両方を実施する必要はありません。ポジションごとに変えて構いません。

Q推薦者は企業側が指名できますか?

人選そのものに企業が踏み込むことはできません。指定できるのは、人数、役割、在籍期間の重なりといった条件までです。特定の個人を名指しして企業から連絡する形にすると、候補者の同意の範囲を超えるうえ、在職中であれば転職活動が現職に伝わる経路を企業側が作ることになります。条件は依頼する時点で候補者に伝え、後から追加しないでください。

Q両方実施する場合、どちらを先にやるべきですか?

事実の照合を先に置く形が扱いやすくなります。在籍期間や職位が確かめられていれば、次に推薦者へ聞くべき期間と、条件として指定する在籍の重なりが定まるためです。逆にすると、推薦者の回答をどの期間の話として読めばよいかが分からないまま読むことになります。工程の都合で並行して走らせる場合も、報告書を読む順番は事実の照合から始めてください。

Q推薦者本人の同意も必要ですか?

推薦者の氏名・連絡先・回答内容を企業が受け取って記録に残す以上、推薦者本人の個人情報を取り扱うことになります。個人情報保護法は、個人情報を取得した場合に、あらかじめ利用目的を公表している場合を除き、速やかに本人へ通知するか公表することを求めています。オンラインの質問票に推薦者が自ら記入する形か、電話などで聞き取る形かによって手続きの当てはめ方が変わるため、実施方法を決める段階で説明の出し方も合わせて決めてください。個別の判断は法務部門や専門家に確認することをおすすめします。

Q推薦者の評価と経歴の照合結果が食い違ったときはどう扱いますか?

事実の照合で出た結果は照合で決着させ、評価は評価として別に扱います。まず、確認が取れなかったのか記録と食い違っていたのかを区別してください。前者は照会先が回答しなかったという相手方の事情であり、候補者について何も語っていません。後者であれば、どの項目がどうずれているかを特定したうえで、候補者本人に事実関係を尋ねる場を設けます。推薦者の評価が高いことは、この区別には影響しません。

まとめ

リファレンスチェックとバックグラウンドチェックの違いは、調べる相手ではなく、集まる情報が照合できるものかどうかという性質にあります。前者は評価の収集、後者は事実の照合です。目的が違うため、片方があればもう片方が不要になるという関係にはなりません。

実務で最も見落とされやすいのが、リファレンスチェックは回答する人を候補者本人が選ぶという構造です。ここから回答は高評価に寄り、直近の職場に集中し、課題が出にくくなります。偏りをなくすことはできませんが、どの方向に偏るかは分かっているため、役割の指定と設問の設計で補正できます。

実施を決めるときの順番

①ポジションごとに判断に使う情報が照合できるものかを書き出す → ②照合できるものなら事実の照合、照合できないものなら評価の収集を割り当てる → ③両方なら事実の照合を先に置く → ④推薦者に指定する人数と役割を確定させる → ⑤現職を対象に含めない前提で照会先を組み立てる → ⑥実施できなかった場合の扱いを先に決めておく

同意の面では、リファレンスチェックで説明する相手が候補者と推薦者の2人になります。推薦者は自社の選考の当事者ではないため、社内で扱いの前提が共有されていないと、回答が想定より広く回覧されます。利用目的の文面、閲覧できる範囲、保管期間の3点を実施前に決めておいてください。

最後に一点だけ。推薦者を用意できたかどうかは、候補者の適性でも能力でもありません。実施できなかったことを不利に扱う運用にすると、確認したかったこととは関係のない基準で候補者を落とすことになります。実施の有無が合否に直結しない設計にしておくことが、運用としても説明としても無理がありません。

参照した公式情報

情報の取得時点:2026年8月。記載の内容は各機関・各社の公開情報に基づく参考情報です。法令は改正される場合があり、個別の事案への当てはめは専門家にご確認ください。